2011年3月30日水曜日

暇つぶし以上に (小椋佳)


H君の部屋に彼女は居なかったが、さっきまで居たそうで入れ違いだそうだ。H君に事情を話すと、彼も困っているようだ。彼女が遊びに来るのは構わないが、来るなら私と二人で来るようにしてくれ、という嘆願であった。彼女の天真爛漫な人格は分っていたが、恐らくH君の夢にかける姿に好意を抱いたのだろう。以前、中野ブロードウエイにあるクラシックという音楽喫茶で、スピーカーのある席で彼を見かけ、あれが芸術家の姿だと言っていたのを思い出した。その姿と、今の私と比較すると、仕事に就いて安定した男と、夢追い人では分が悪い。本来は私だって夢追い人だったが、彼女の為に夢を捨てて現在に至るのだ。

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